睡眠時無呼吸症候群とは
**睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)**は、睡眠中に呼吸が一時的に停止または浅くなる病気です。これが繰り返されることにより、十分な睡眠が取れず、昼間の眠気や疲れ、健康への影響が生じます。特に睡眠中に無呼吸が30秒以上続く場合を「無呼吸エピソード」と呼び、これが1時間に5回以上発生すると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠時無呼吸症候群の種類
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
- 最も一般的なタイプで、睡眠中に喉の筋肉が弛緩し、気道が部分的または完全に閉塞して呼吸が停止します。無呼吸と低呼吸が繰り返され、酸素の供給が一時的に不足します。
- 原因:肥満、喉の筋肉の緩み、舌の位置、扁桃腺やアデノイドの肥大など。
- 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
- 脳の呼吸を制御する部分に問題があり、呼吸が止まるタイプ。気道に異常はないのに、脳が呼吸を指示しないことによって発生します。
- 原因:脳の障害、脳血管障害、高山病など。
- 複合型睡眠時無呼吸症候群
- 閉塞性と中枢性が混在したタイプ。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療を行った後も、中枢性の症状が続く場合があります。
睡眠時無呼吸症候群の症状
- いびき: 大きないびきが特徴で、無呼吸の前後に音が止まり、再開することがよくあります。
- 呼吸の停止: 睡眠中に何度も呼吸が止まる(無呼吸)。
- 昼間の眠気: 睡眠の質が低いため、昼間に強い眠気を感じる。
- 朝の頭痛: 酸素不足により、朝起きた時に頭痛を感じることがある。
- 集中力の低下: 疲れや眠気が原因で、集中力が続かない。
- 高血圧: 無呼吸が繰り返されることで、血圧が上昇することがある。
- いらいらや気分の不安定: 睡眠不足からくる精神的な不調。
睡眠時無呼吸症候群の原因
- 肥満: 体重が増えることで首周りの脂肪が増え、気道が狭くなり無呼吸を引き起こしやすくなります。
- 年齢: 40歳以上になると無呼吸症候群のリスクが高くなります。
- 性別: 男性は女性よりもリスクが高いですが、女性も閉経後にリスクが増加します。
- 家族歴: 睡眠時無呼吸症候群の家族がいる場合、リスクが高くなります。
- 喫煙: 喫煙は気道を炎症させ、無呼吸症候群のリスクを高めることがあります。
- アルコールや薬物: 眠る前のアルコールや鎮静薬の使用は、喉の筋肉をさらにリラックスさせ、無呼吸を悪化させることがあります。
- 鼻づまりやアレルギー: 鼻が詰まっていると口呼吸が増え、無呼吸を引き起こしやすくなります。
診断方法
- 問診・睡眠の経過の確認: いびきや無呼吸の有無、昼間の眠気、生活習慣の確認が行われます。
- ポリソムノグラフィー(PSG): 睡眠時の脳波、呼吸、心拍、筋肉の動きなどを測定する検査です。主に病院で行われ、睡眠の質を詳しく調べます。
- 自宅で行う睡眠検査(簡易睡眠検査): 自宅で簡単に行える機器を使って無呼吸の回数や深さを測定する方法です。
治療法
- CPAP療法(持続的気道陽圧療法)
- 睡眠中にマスクを装着し、気道を開いたままにするために、空気を強制的に送る装置を使用します。最も一般的な治療法です。
- 外科的治療
- 口蓋垂の切除(扁桃腺やアデノイドの肥大などが原因の場合)や、気道を広げる手術が行われることがあります。
- 顎の手術: 顎の位置を調整して、気道を広げる手術が行われることもあります。
- 口腔内装置(マウスピース)
- 顎を前方に出して気道を広げる装置を使用します。軽度な閉塞性睡眠時無呼吸症候群に効果的です。
- 生活習慣の改善
- 体重減少: 肥満が原因の場合、ダイエットにより症状が軽減されることがあります。
- 禁煙: 喫煙が原因の場合、禁煙することで症状が改善されることがあります。
- アルコールや薬物の制限: 寝る前のアルコールや薬物の使用を控えることで症状が改善されます。
- 睡眠姿勢の改善: 仰向けで寝ると舌が喉に落ちやすくなるため、横向きに寝るようにすることで無呼吸の頻度が減ることがあります。
合併症と健康への影響
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、以下のような健康リスクが高まります:
- 高血圧: 無呼吸による酸素不足が心臓に負担をかけ、血圧を上昇させます。
- 心血管疾患: 心臓病や脳卒中、心筋梗塞のリスクが高くなることがあります。
- 糖尿病: 睡眠時無呼吸がインスリンの効きを悪化させ、糖尿病を引き起こす可能性があります。
- 交通事故や仕事の事故: 昼間の眠気が注意力や反応速度を低下させ、事故を引き起こす可能性があります。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、治療しないまま放置すると健康に深刻な影響を与える可能性がありますが、適切な治療や生活習慣の改善によって症状を管理し、生活の質を大きく改善することができます。疑わしい症状があれば、早期に専門医を受診し、診断を受けることが重要です。